あなたと1/3

いつも通り学校に行くとあなたがいた。
まるで1学期の俺を見てるようだ。
みんなあなたを避けて通る教室。
「俺だけは味方だぞ」と心の中で呟いた。
やがて秋も終わり冬になり、部活では自画像が課題になった。みんな自分の顔を見ながら絵を描いている、それに習って俺も自分の顔を鏡でみた。
俺の目はあなたに似て光がなかった。
目を見開いてとりあえず眼球に蛍光灯の光を入れた。
自分の顔を描くなんて恥ずかしくて集中できなかった。ひたすら周りをキョロキョロしていた。
横を見ると席をひとつ挟んであなたが鏡をじっと見ていた。
俺は鏡に映るあなたの顔を遠くから覗き込んだ。
頬には涙が流れていた。
先生が心配してあなたの背中を擦りだした。
暫くすると落ち着いたようで自分を描きだした。
俺もとりあえず輪郭だけでもと鉛筆を動かした途端に鉛筆の芯が折れたのでやる気が失せた。
定時までぼーっとしていたが暇なので、勇気を出してあなたに話しかけてみた。
「自分の顔なんで描きたくないよね」
「…うん」
涙でカピカピになった唇で小さく返事をした。
たぶんあなたがこうなってから話しかけたのは俺が初めてかもしれない。
それからはバスの待ち時間に少し学校のことを話したりするような日々が続いた。俺と話す時だけ少し笑顔をくれるようになった。俺だけに見せる笑顔に特別感を感じずにはいられなかった。出来ればだが学校でいつも笑っていて欲しかったが、いきなりみんなと話せるような雰囲気でもなかった。
少しずつだが元気を取り戻しているあなたのことをいつも見ている日々がなんとなくだが充実していたように思えた。
学校だけでなくLINEでも会話するようになり、朝は「おはよう」夜は「おやすみ」と言い合う習慣ができた。
それだけだったがその挨拶に俺も元気をもらっていた。
そんな感じで俺とあなたの高校1年が終わった