静かな復讐

2年後期になるとここちゃんと席が隣になりよく喋る仲になった。2年の締めくくりとして各科で大きな作品を1人1つ作らねばならず、2人の講師に見せて案が通らねば作業に入れないものだった。皆案にダメ出しを喰らいまくり好きなものがかけずにいた。俺は描きたいものがなく、適当に家の猫を描こうと思ったが案のラフの時点で形が狂ってるなど的外れなことばかり言われサボった。

サボり続けると進級できないことを脅され渋々顔を出した。周りは作業に取り掛かっていた、特にダメ出しされたものが変わったわけでもなく時間がたってokをもらったようなもので講師は商売なんだと思った。

俺も同じように初期の案でいいからと描くことになった。周りはサボり続けた俺に作業のストレスを晴らすように蔑んだ。

締切の前日になり明日は合評があるが全く完成していなかった俺は画面を塗りつぶし狂ったように今の状況を描いた。それは周りに不気味な眼を付けたキノコを11本と真ん中に猫を置いた構成でその不気味な眼はすべて猫に向いている。配色もサイケデリックな気持ち悪いものだ。言わずもがなキノコはデザインの女子、猫は俺だ。俺はキノコが大嫌いだからこの女子達をキノコに例えたのだろう。俺はこの絵を描いている時芸術を心底楽しんでいた。

一夜にして化けたサイケな絵を見て自分がこんなものを生み出したのかと少し怖くなったが生み出した自分に自信が湧いた。そしてこれを明日奴らに見せると思うと楽しみで仕方がなかった。そして合評で俺の絵を皆に紹介した。絵の理由は言わなかったが描きたいものが描けたと説明し講師の評価を仰いだ。講師は内容を読み取ったのか作品の内容については触れなかったが、色使いや構成については褒めてくれた。11人の女子達は変な顔をしていて描いたキノコにそっくりだった。