新学期と噂

2学期が始まった。
この間まで学校に行きたくなかったはずなのにNと仲直りしたおかげですこし学校に行きやすくなっていた。
クラスの女子とは関わらずNと常に行動していたが、あなたが学校にいないことが気になっていた。
俺はあなたとは喧嘩してた訳では無いけど、Nとの事もありどうなったのか気になった。
特に何も起こらない生活がしばらく続くとあなたが久しぶりに学校に来た。話しかける勇気はなかった。
というより話しかけられる状態じゃなかった。
目は赤く、誰とも喋らず、授業中はずっと寝ていた。そんなあなたを見ると気になって仕方がなかった。
少し勇気を出してNに聞いてみた。
「あいつどうしたん?」
「しらね」
と冷たく返された。それは俺に対してではなくあなたに対しての冷たさを感じた。まあNは過ぎたものを悪くいうようなやつだからその返事は俺にはよくわかっていた。
部活に行く気力が出なかった俺はNを誘って一緒に部活をサボった。偶然バスにはあなたがのっていた。1人でイヤホンで耳を塞いで座っていた。その目に光はなかった。
駅に着いてNと別れた。気になったのであなたを遠くから少しつけてみた。泣きながら帰り道とは逆方向に歩いていくのが見えた。
そして、黒い車に乗って消えていった。
親かなと思ったが、窓が黒く塗られていてよく分からなかった。
少し心配だったが、いつも通りエナジードリンクを片手に好きなハードロックを爆音で流しながら帰った。

次の日もあなたは学校に来ていたが昨日と変わらず誰とも接さず部活をサボって帰っていった。
クラスの女子達があなたの噂をするようになった。
仲の良かったTも他の女子と噂話で盛り上がっていた。
女の怖いところをみた。
2学期が始まって1ヶ月が経とうとしていた。
俺は学校で女子に話しかけられるようになった。
少し学校が楽しくなっていた俺がいた。
だが、あなたは1学期の俺と同じ状態になっていた。
話しかけてくる女子から、あなたの噂話を聞かされた。
「あの子、援交してるらしいよ…」
「えっ?」
俺は少し戸惑ったが噂は信じない主義なので適当に聞き流した。
その日の帰り道その噂話を思い出した。
そして俺があなたをつけたことを思い出した。

黒の車…泣いていた、

いやいやそんなことはないだろう。
また噂に踊らされてると一人鼻で嘲笑して、

爆音で耳を塞いだ。

復活と悪寒

ボロボロのまま夏休みに入った俺はゲームに明け暮れニートのような暮らしを続けた。ゲームをいくらやっても満たされない心が呻き声をあげた。気づくとコントローラーが壊れ、メガネにヒビが入ってた。
墜ちに堕ちた夏休みは一瞬に終わろうとしていた。
始業式の1週間前から始まる登校日が明後日に迫っていた。宿題を全く手をつけていなかった。というより今までまともに夏休みの宿題なんかやったことなかったなと昔のことを思い出して少し涙した。

学校が始まった。

親にはいつも通り登校すると見せかけて制服のままゲーセンに行った。罪悪感が暫く蝕んだがやってやったような気持ちで少し興奮してきた。特にやりたいゲームは無かったがufoキャッチャーに1000円ほど溶かした。ゲーセンから出て画面の割れたスマホを確認すると何件も着信があった。
学校と家から5回ずつぐらい。
何かに追われてるような気がして怖くなった。追い討ちをかけるように着信が来た。親だ。コール数と共にカウントダウンを進めるように罪悪感が倍増していった。10コールぐらいすると電話が切れた。
なんか親に捨てられた気がした。
夕方ぐらいに家に帰ると親に怒鳴られた。

少し安心した。
次の日は勇気を振り絞って学校にいった。担任は快く迎えてくれたが、生徒は俺なんかいないもんのように生活している。
ふとあのグループの3人はまだ仲良くやってるのかと思った。だが、もうあの賑やかなグループはなく、3人はバラバラになっていた。特にNとあなたは避けるように会話をしなかった。登校期間が終わり土日を挟んで始業式の日になった。今日から2学期が始まると思うとゾッとする。
授業は次の日から始まるようでその日は席替えをした。Nが隣になった。気まずかったがもう話すこともないだろうと無視していた。
放課後になるとNが話しかけてきた。
「仲直りしないか」と切り出してきた。軽く呆れた。決して俺には謝らないのは昔から何も変わってないな。
「…いいよ」と冷たい返事で仲直りをした。
その日はNと仲直りの外食に行った。
思った以上にすぐ打ち解けあった。
男の仲直りなんてこんなもんなのかな。
家に帰り、明日からまたNとつるみながら学校生活を送ることに心の底では嬉しく思っていた。だが少し自分が甘いことにムカついた。次から気をつけて付き合っていこうと思った。
暫く経つとNとあなたが別れたことがわかった。

登校日の時から会話がなかったのはそういう事だったのかと歯車が噛み合ったようでスッキリした。

だが肝心のあなたは学校をよく休むようになり部活にもこなくなっていた。

希望と裏切

次の日から俺は1日に学校で誰とも喋らない生活を送った。孤立初日は自分の席で弁当を食べた。隣では他の3人が楽しそうにお昼を過ごしていた。俺はこいつらとは違うと1人飯を早く終わらせ勉強に励んだが見せつけだけだった。
次の日、お昼に購買にパンを買いに行った。Nとあなたが歩いていたところにすれ違ってとても気まずい心境だったが、さっさとパンを買って教室に戻った。戻ると俺の席にうるさい女子が座っていた。どうやら俺の隣の席の子とご飯を食べたかったようで俺の席を借りてたようだ。席の前に行くと何故か睨みつけられそいつは自分の席に戻っていった。
そんなような日々が続いていたが、クラスのフレンドリーな女子SがLINEを追加してきた、八方美人な感じで他に話すクラスメイトもいないのでSとLINEをするようになった。学校では恥ずかしくてあんまり喋らなかったが、LINEではいつも話すようになっていて、SとのLINEだけが楽しみだった。
そんなある日、Sから「最近他の3人と喧嘩したの?」と聞かれた。Sのことは唯一信じていたので事情を説明した。Nとあなたがいい感じだから付き合ってるんじゃないか、という話まで色々と話した。

いつしかSの事が気になり始めていた。

Sは俺の味方だし、みんなに優しいしいい子だなぁと。
テスト期間が始まり部活も休みになったある日、帰りのバスを待っていると俺以外のグループの3人が楽しそうにバス停まできた。Nとあなたがいつも通り喋っていたがTさんが俺の方をチラチラと見ていた、目が合ってしばらくすると話しかけてきた。「3人とも仲直りしようよ!クラス3年間も変わらないんだからさ!」と言ってきた。
俺は冷たい視線を3人に寄越した。するとNが「お前俺達が付き合ってるとか噂してるだろ!」と言った。
俺は「してねーよ!」と返したがNは俺にスクリーンショットを見せた。それは俺とSとのLINEの会話だった。流石に言葉が出なかった、なんでこれを持ってんのか聞くことすらできなかった。あなたが嫌な目で俺を見ている。
完全に敗北した俺は何も言えぬまま帰って泣いた。

 

SのLINEブロックした。
ついでにスパムで通報してやった。
スマホを壊した。

 

テストが終わり開放されたと同時に学校を2.3日休んだ。夏休みまでもう少しだったができればもう夏休みまで休みたかったが親が心配していたので行くことにした。2.3日ぶりの学校だが、もう教室に俺の居場所はなかった。元々なかったようなものだけど…
教室で飯食べようとするとまたうるさい女が俺の席に座っていた。俺のいなかった2.3日楽しく食ってたんだろうなって思うとぶち壊してやりたくなった俺は、「どけよ!」怒鳴ったが、女は睨みながら小声で「…くんなよ」と言ったのがわかった。怒鳴って強気に出ていた俺だが心はもうボキボキに折れていた今にも泣き出したいぐらいだった。
抜け殻のような生活を送って部活に通ってボロボロで毎日過ごした。部活が忙しくなり、好きな絵も描けなくて自由すらなくなった。

出会と好敵手

それは俺が高校の時の話。
高校は偏差値ド真ん中の一般的な公立進学校。中学の時はろくに勉強もしなかったけど昔から絵を描くことが趣味で小中と絵で賞なんかを貰ったりして周りも美術の方向で行くことを推してたこともあって近くの美術科がある学校に進学した。
入学式、俺は大きなアルタートケースを片手に登校した。可愛らしい女の子が俺のアルタートケースを見て「私もあんなのが欲しかった」と言った。


それがあなたとの出会い。


次の日、あなたが同じクラスで同じく美術科の生徒だった。クラスの9割が女子だったのでとても心細い心境だったが、小中と一緒で仲の良い友達Nがいた、Nも俺と同じで絵を描くのが好きなやつだった。Nが居たおかげで少し心強かったが、いつでもライバルな奴だった。
学校にだいぶ馴染んだ頃、俺とNとあなたとその友達のTさんと男女4人で合コンよろしくのグループでつるむようになっていた。
つるむようになってから薄々気づいていたが、Nとあなたは以前から面識があるようだった。というのも、Nの妹がダンスを習っていてそのダンススクールにあなたがいたということだった。親同士も仲が良かった。
なんだか俺は、そんなNに嫉妬していた、常にライバルなNに先を越されたと。
ある日、Nが「放課後プラモデル見に行こうぜ」と誘ってきた。学校の近くには古いプラモデル屋があり中学の頃から2人でよく通っていたのだ。俺は特に用事がなかったので行く約束をした。放課後になったのでNを探しに行くとあなたと二人っきりで美術室で楽しそうに話していた。普通ならお楽しみのところ邪魔してはいけないんだろうけど、この時の俺はあなたのことが気になっていたし、ライバルのNに先を越されたくないと教室に入ってNに「プラモデル見に行くぞ。」と呼びかけたがNは話を誤魔化してあなたと話し続けた。

イライラした俺は走って帰った。
家に帰るとLINEの通知が来ていた、それは4人のグループの会話で楽しそうに話す俺以外の3人だった。ひとり取り残された様な俺はそのLINEのグループを抜けた。

次の日学校でNが俺に謝ってきたがNが俺にしたように俺はNを無視した。

 

この時を最後に俺は学校で完全に孤立した。